今回は,
「タダスケの日記」で紹介されていたロースクール関連ブログのうち,『
大阪:13卒法科大学院卒業、26歳既卒者のサポートを停止』(KUNIYUKIさんの記事)を取り上げます。
このKUNIYUKIさんという人物は,法曹とは特に関係ないキャリアカウンセラーで,2013年に法科大学院を修了したTさんの就業支援を担当したところ,結果としては就業決定に至らずサポート停止になったということで,記事にはその経緯が記載されています。
Tさんの経歴
大阪生まれ、大阪育ちのTさん。
今年の10月頃に大阪にて初回カウンセリングを行いました。
ストレートで大学に入学し、浪人・留年もなく法科大学院に入学。
法曹を目指したきっかけは昔自分自身が訴訟トラブルに巻き込まれかけた経験があったからだそうです。
その時に法の重要性を肌で感じて、自分が知識を付けて守る立場になりたいという強い想いがあり、勉学に励みました。
2013年に大学院を卒業して1年半独学で司法試験の勉強を続けました。
直近の試験では僅差で不合格という結果になり本人も非常に悔しい想いをしたそうです。
来年も再挑戦をするか、それとも違う道を考えてみるかという悩みをもってカウンセリングに来てくれました。
カウンセリングでは導くというよりは、【情報提供】を行います。
26歳で社会人経験なしという状況が就職が厳しいという現状をつたえ、その中でも働ける可能性のある企業を推薦していきました。
複数社選考を受け、最終選考まで行った企業様もありましたが残念ながら不合格。面接対策の時間はゆうに10時間を超えていました。
もうちょっとだから頑張って行きましょう!と声をかけて、臨んでおりましたが、Tさんも選考を受けながら
『自分が何をやりたいか』
という事について深く考える様になりました。
2015年の司法試験を再挑戦する事を決定したTさん
再挑戦する事を決心しました。
最後の面談では、何故その結論に至ったかというところを深く話しました。
既卒者の就業支援を生業というしているものとして、現実を教える事は義務だから。
試験不合格時のリスクに関してもくどくどと説明をしました、就業を推薦する訳ではなく、リスクを自認して試験に取り組んで欲しいからです。
『こんなことになるなんて、何故あの時言ってくれなかったんだろう』と言われるのはこの職務を全うしていないという意味なので。
それでもTさんは司法試験を再受験する決意を示しました。
『Tさん、絶対合格して僕の訴訟トラブルをすぐ解決して下さい!』
と訳分からんお願いをして、カウンセリングは終了。
Tさんの言葉からも真剣味が伝わってきたので、自信を持ってサポート終了することができました。
もしTさんがこのブログを読んでいるのであれば、この時の気持ちを忘れずに試験頑張って下さいね。
応援しています!
そして悩んだ時はふらっと僕にLine下さい。
合格したTさんと再会出来るのを楽しみにして、島耕作の読書にふけます。
旧司法試験時代であれば,26歳で受験3回目ならそこまで悲惨な境遇ではなかったと思いますが,現在の実情は大きく違います。
もし,Tさんが現役の弁護士に相談していたら,たぶんこんなアドバイスを受ける可能性が高いでしょう。
「例年,新司法試験の3回目受験で合格できる人は少ない(平成26年は324人)。法改正により新司法試験は5回まで受験できるようになったが,4回目・5回目の合格も同様にかなり厳しいだろうから,一般論としてこのまま司法試験の勉強を続けても,合格できないまま司法試験の受験資格を喪失してしまう可能性は高いと言わざるを得ない。30歳近くになって受験資格喪失,社会人経験も無しでは,一般企業への就職はほとんど絶望的になるだろう。
仮に新司法試験に合格できたとしても,3回目以降の合格では法律事務所への就職は難しいだろうし,運よく就職できても最近の法律事務所は労働条件がひどく悪く,低賃金で酷使されるところも多い。既存の法律事務所に就職できずいきなり独立して,弁護士としての収入をほとんど得られないままアルバイトで糊口を凌ぎ,ただ弁護士の肩書を維持するだけのために,月何万円もの会費を弁護士会に上納して搾取されているような人も少なくない。
弁護士なんて,ごく一部のエリート層以外は,何の未来も希望もない。悪いことは言わない。司法試験なんかさっぱり諦めて,企業に就職するなり公務員になるなり,まだ若いうちに他の進路を目指した方が良い。」
弁護士業界のことは知っていても他の業界に詳しくない人であれば,たぶんこういう結論になると思いますが,逆に一般企業への就職事情は知っていても弁護士業界に詳しくないKUNIYUKIさんのような人がアドバイスすると,「26歳・社会人経験無しでの就業は厳しい」という結論になってしまうようです。
KUNIYUKIさんも「司法試験不合格時」のリスクは説明されたようですが,おそらく「司法試験合格時」のリスクは十分に説明していないでしょう。これでは,相談者が「何とか司法試験に合格すれば明るい未来が開ける」かのように誤解してしまうおそれがあり,「現実を教える」というカウンセラーとしての義務を十分に果たしているのか,疑問の余地があるように思われます。
KUNIYUKIさんの行動がキャリアカウンセラーとして適切だったかという問題は措くとしても,このように新司法試験になかなか合格できない法科大学院修了者は,弁護士に相談すると「司法試験なんか諦めた方がよい」とアドバイスされ,それ以外の人に相談すると「今になっての就職は厳しい」とアドバイスされ,結局たらい回しにされてしまうというのが実情のようです。合格してもその後の道のりは険しいと分かっていても,修了生の大半が新司法試験の受験を続けるのは,要するに他の行き場所がないからなのでしょうね。
それでも,Tさんの場合年齢が26歳と比較的若く,独学でも合格まで僅差の線に辿り着いたということなので,法科大学院修了生の中ではまだ恵まれている方なのかも知れません。同じく「タダスケの日記」で紹介されていた
『人生崖っぷち!? ロースクール生の苦悩』のブログ氏は,もっと悲惨な状況に陥っているようです。
人生崖っぷちのロークスクール生(注:原文ママ)
ヤバいヤバいヤバい・・・出川哲朗みたいになったけど本当にヤバい・・・。
何がヤバいのか? というと、成績が非常にヤバかったのです。前期に7個ある必修科目のうち、3個を落とすという始末。ちなみにうちの大学院は4個落としたら留年です。留年したら・・・そう考えるだけで身の毛が総立ちです。
なぜなら、僕は人生崖っぷちだから。年齢は既に29を迎えていて、アラサー。30目前。今までに就職経験もない。もしこれで司法試験に受からなかったら・・・と思うと、夜も眠れません。
僕は、司法試験に受からないとお先真っ暗なのです。
なぜこんな成績になってしまったのか?
そんな僕がなんでこんな成績になってしまったのか? 成績が悪い人って、大抵2つに分かれますよね。
・勉強をサボっていたか?
・ただのアホか?
ええ、ええ。大抵はこの2つに分かれると思います。そして、僕はこの2つのタイプを掛け合わせたハイブリッド種なのです。
そもそも、僕がロースクールに入ったことが間違いだったのかもしれません。就職できないまま大学を留年して、そのまま特に何をするでもなくブラブラ遊び、世間体が悪いからと地方のロースクール未修者コースに入ったのが間違いだったのかもしれません。
そして、その中でまたダラダラと1年半を過ごす・・・2年生後期の現在、もはや待った無しです。先日実施された中間試験でも、僕はやらかしたと実感しています。みんなが試験が終わって安堵して笑っている中、一人お葬式みたいでしたから。
どこのロー生かは分かりませんが,30歳目前でロースクール在学中,しかも留年の危機にあるという状況では,普通に考えたら新司法試験合格に辿り着くのは難しいでしょうね。
また,司法試験の受験歴が長引いている受験生でも,「勉強は一生懸命やっているがなかなか合格できない」という人なら,まだ救いがあります。こういう人は,丸暗記中心・読書中心などという誤った勉強方法を見直せば,意外とあっさり合格できることもあるからです。ただし,他人のアドバイスを聴かない人,自分の答案を見られるのを嫌がる人,日本語能力があまりに低い人については,この限りではありません。
これに対し,ブログ氏のように,「勉強をさぼっていた」「アホである」と自認されている方に対しては,新司法試験合格に向けたアドバイスもやりようがありません。「どうしたら勉強を続けられるのか」などと質問されても,「そのようなことは大学受験までに各自習得すべきものだ」と答えるしかありません。むしろ,そんな人の入学を認めるロースクールの側に問題があると言えます。
平成27年度の法科大学院入学者数は,適性試験の受験者数に照らし,大体1900人台になるのではないかと推測されます(下記データを参照。例年,実入学者数の減少幅は適性試験受験者数の減少幅よりやや緩く,仮に今年の減少幅を15%と見積もった場合,実入学者数は1,931人という計算になります)。
適性試験受験者数
(入学有資格者のみ) 減少幅 法科大学院実入学者数 減少幅
平成25年度 5,801人 2,698人
平成26年度 4,792人 -17.4% 2,272人 -15.8%
平成27年度 3,994人 -16.7% ? ?
それでも,来年法科大学院に入学してしまうと推測される人が約1900人いるわけですが,おそらくその相当数が,就職できず他に行き場所もないからという消極的な理由で法科大学院を選んでいるのでしょう。どんな進路を選ぶかは個人の自由ですが,法曹になるまでの辛く険しい道を進むという覚悟もなしに法科大学院進学の道を選んでしまうと,結局「法曹になるのは難しい」「企業に就職するのも難しい」とたらい回しにされ,一生を棒に振ることになります。
法科大学院に入学する人の中でまだ救いがあるのは,入学前から予備試験に挑戦し,上位校の既修者コースに合格して,それなりに勉強を積み重ねている人だけですね。予備試験を受験したことが無く,今後も受験するつもりはないのに法科大学院に入学して法曹になろうと考えている人は,それ自体が心得違いだということを十分自覚してください。
あと最後に。ブログを開設するのは簡単ですが,続けるのは結構大変なので,これからブログやる人は根気強く頑張ってくださいね。長年ブログを続けられる粘り強さは,おそらく司法試験合格にも役立つのではないかと思います。
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