「加藤民法」の概要が分かりましたけど・・・。
- 2009/02/23
- 00:03
最近、民法改正に関する最新情報の公表が相次いでいます。
民法改正に取り組んでいる学者のグループは主に3つあり、1つ目は前東京大学教授(現:法務省参事官)の内田貴氏が中心となっている「民法(債権法)改正検討委員会」。3月末に予定されている改正試案の公表に向けて、現在急ピッチで作業が進められており、ホームページにも最近読み切れないくらい大量の資料がアップされたのですが、正直なところ、黒猫にも全部を読み込む時間的余裕はとてもないので、大人しく改正試案の公表を待つ方針に決めました。
2つ目は、上智大学の加藤雅信教授を中心とする「民法改正研究会」、通称「加藤民法」。民法改正研究会は、昨年10月に「日本民法改正試案・仮案」を発表したというものの、その内容は日本私法学会の会員でないと読めないということで幻滅していたのですが、私法学会での議論やその後の意見等を踏まえて若干改訂したものを「平成21年1月1日案」という形で公表し、判例タイムズ1281号に掲載されましたので、それをやっと黒猫も入手することができました。
なお、3つ目は、特に団体名は付いていないようですが、昨年『民法改正を考える』という文献を出したグループで、代表者の名前を取って「椿民法」などと呼ばれています。
これに対し、弁護士業界では、民法改正自体に批判的な意見もなお根強く、法制委員会の委員で、東海大学法科大学院の教授も務められている鈴木仁志先生が、日弁連の機関誌『自由と正義』2009年2月号に、『民法(債権法)改正の問題点』という論説を寄稿されています。
別に、民法改正自体に対する批判的意見を展開されるのはご自由ですし、鈴木先生のご主張の中には、黒猫自身も同意見という部分も少なからずあるのですが、一つだけ言わせてもらいたいことがあります。
鈴木先生は、以前から内田参与が、今回の民法改正で日本の民法をアメリカナイズしようとしているのではないかという主張を展開されていて、今回の寄稿にもそういった話に言及されているのですが、大学で英米法を習った人ならすぐ分かるとおり、そもそもアメリカには民法典自体がありませんからね。
英米法は、基本的に判例法で形成されていますから、物権と債権とか、法律行為とか、民法と商法とか、明文の民法典を作ろうとするから問題になるような概念を持ち合わせていなくても不思議ではないのですが、民法典を改正するにあたり、そもそも民法典がない国の民法を真似ようとしても、真似のしようがありませんし、検討委員会の議論を読んでも、さすがにそんな無謀なことをやろうとしている形跡はありません。
アメリカのデラウェア州法をもとに起草された新会社法は、あまりに長文・難解すぎて、法律の専門家でも細かいところまでまともに読める人が少ないため、いまや知的財産法並の専門分野になりつつあるなどとも言われていますが、その問題と今回の民法改正は、おそらく別問題と考えた方がいいでしょう。
若干話が反れましたので、ここから本題である「加藤民法」の改正試案(平成21年1月1日案)の感想に入りたいと思います。改正試案は、法律の条文の形が採られており、現行民法の第1編から第3編のほぼすべて(ただし、担保物権の部分は、実務家の意見を聴く必要があるので、まだ作成していないそうです)を網羅するものであるため、このブログでそのすべてについて言及することはできませんが、現時点で特に気になった部分について、以下にコメントすることにします。
1 (趣旨)
第1条 この法律は、個人の尊厳を尊重し、財産権の保障を基礎とした私人の自律的な法律関係の形成及び両性の本質的平等を基礎とする人間関係の形成を旨として、私人間の法律関係を規定する。
・・・これが改正案の第1条らしいのですが、なんか目的と解釈指針が混同されていて、何となくいい感じに決めようとしてかえって意味不明になっているような文言ですね。最初からこれじゃ、先が思いやられます。
2 「法の適用に関する通則法」への移管?
改正案によると、現行民法の住所に関する規定と、期間の計算方法に関する規定は「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」)に移すものとされています。
住所の規定はともかく、期間の計算は実務上もかなり重要な規定であり、民法以外の規定の解釈にも使われるものですが、なぜこのような規定を「通則法」というマイナーな法律に移す必要があるのでしょうか。
通則法は、法律の専門家なら大体の人は知っているでしょうが、もとは「法例」と呼ばれていた、その実質的内容のほとんどは国際私法で占められている法律であり、通則法を知らない人にとっては、このような移管は混乱を招くだけでしょう。
自分で「壊れていないものを壊すな」とか言っておきながら、言っていることとやっていることが矛盾しています。
3 レファレンス機能?
現行民法は、特別法により実質的に修正されている部分が多く、民法を読んだだけでは法規範の全体像が分からない一方、それらの特別法を全部民法に取り込むのも現実的ではないため、たとえば不法行為の章では「この章に基づく損害賠償については、この法律のほか、自動車損害賠償保障法、製造物責任法その他の法律を適用する」といった規定を入れて、他の法律へのレファレンス効果を持たせるものとされています。
しかし、民法の特例を定めた法律をすべて上記のような規定に入れ、かつ民法に規定のない特例は無効とするのであれば、上記のような「レファレンス効果」も意味があるかもしれませんが、不法行為の特例は当然ながら自賠責法や製造物責任法に限られるものではなく、他にもたくさんあります。
それらを全部挙げるのではなく、「その他の法律」などと書かれるのであれば、結局他の法律による特例の有無を自力で調べなければならないことに変わりはなく、レファレンス効果など実効性はないに等しいでしょう。
こんな無意味な規定を置くために無駄に条文数が増えるのであれば、迷惑極まりないです。
4 消滅時効の成立時期
改正案107条3項によると、「債権は、5年の期間満了後最初の年度末まで行使しないときは、その年度末に消滅する」ものとされています。
加藤教授の説明によると、債権の消滅時効成立時を毎年度末(条文案からは読みとれませんが、毎年3月31日を考えているそうです)に統一することにより、債権の管理をやりやすくすることが目的だそうですが、あまりにも非論理的である上に、実際の債権管理の実務において、わざと時効成立寸前まで未回収の債権を放置しておくような例はほとんどないでしょう(まともな債権者は、時効成立以前に、倒産等による回収不能にならないように気を配るのが普通です)。
実際に債権の消滅時効が成立する事例のほとんどは、既に回収を諦めて放置したか、あるいは債権の管理自体を怠っていて、気付かないうちに時効が成立していたというものであり、このような規定を置いても、まず実務上の役には立ちません。
それどころか、弁護士としては、依頼者に「なぜすべての債権について3月31日に時効が成立するのか」と聞かれたら、説明に窮するため、かえって迷惑です。
5 少額債権の消滅時効
改正案107条4項によると、元本が政令(省令)で定める額に満たない債権については、消滅時効の期間を2年とするそうですが、一体何円以下の債権を対象とするつもりなのかさっぱり分からない上に、一般的に少額債権の消滅時効を2年とされると、金額の少ない過払い金返還請求権や、マンションの管理費債権といったものまで時効が2年とされかねません。
マンションの管理費債権については、最高裁の判例で消滅時効を5年(定期金債権)としたものについても、悪質な滞納者を喜ばせるだけだということで、管理組合の関係者からかなり評判が悪かったのですが、それが2年となっては、もはや管理組合いじめの法律と言われても仕方がないでしょう。
6 所有権境界画定の申立て?
改正案137条では、所有権に関する規定の中に、「所有権画定の申立て」なる制度が新設されているのですが、それ自体制度趣旨がよく分からない規程である上に、この申立をした当事者は、?所有権確認請求又は所有権に基づく返還請求につき、中間確認の訴えをもって、その訴訟の当事者が隣り合う土地の所有者であることの確認を求めなければならない、?この申立がなされたときは、裁判所は、相手方当事者に反訴の提起を求めなければならない、などといった規定が置かれています。
中間確認の訴えや反訴の提起が強制される手続きなど聞いたことがなく、一体何を意図しているのかさっぱり分からないのですが、少なくともこの条文を作った人たちが、民事訴訟法や民事訴訟の実務を全く理解していないということだけはよく分かります。
以前、新司法試験の論文試験では実体法と手続法の融合問題を出題することが予定されていたところ、法科大学院卒業者に融合問題を解かせるのは無理だという声が考査委員の間から上がって、最近は融合問題がなくなったという話をこのブログにも書いたことがありますが、悪いのは法科大学院生ではないですね。院生たちを教える側(法科大学院の教授たち)に、融合問題など教える能力がなく、自分たちで何かの手続規定を作ろうとすると、こんな間抜けな規定しか作れないというのでは、法科大学院卒業者のレベル向上が期待できないのもある意味当然ですね。
7 基準利率
改正案では、従来一律年5%とされていた法定利率について、変動金利制を採用するものとされていますが、その利率については「基準利率は、別に政令で定めるところによる。基準利率は、これを告示しなければならない。」とされているだけで、基準利率の具体的な決め方については何も言及されていません。
現行法でも、部分的に変動金利制を採用している立法例はあり、例えば所得税・法人税・相続税にかかる利子税のうち一定のものについては、利率が日本銀行法15条の規定により定められる商業手形の割引率(現在は「基準割引率及び基準貸付利率」として定められ、2008年12月19日よりその割合は0.30%)に4%を加算したものとされています(租税特別措置法93条。ただし、年率7.3%が上限)が、民法上の基準利率の定め方について法律に全く規定を置かず、政令に丸投げというのは、立法案のあり方としてあまりに無責任でしょう。
民法上の法定利率が何%になるのか「あの」麻生総理次第などというのでは、怖くてとても賛成できません。
改正法のポイントとされているところを中心に、改正試案をさらっと流し読みしただけでも、これほどまでにバカ規定のオンパレードというのでは、詳細まで検討していったら、おそらく他のところも穴だらけでしょう。
加藤民法の研究会では、日弁連や東弁を含む法曹関係者との懇談会を呼びかけているようですが、この改正試案の内容を読む限り、こんなバカな連中と懇談するだけ時間の無駄だと思います。民法学者約20人が3年もかけて、このざまではねえ・・・。
というより、新司法試験を受験するにあたり、こんな馬鹿な連中が講義をやっている法科大学院の修了を強制されるというのは、憲法22条で保障されている職業選択の自由を不当に制限するものであり、憲法違反とするしかないでしょう。
民法改正に取り組んでいる学者のグループは主に3つあり、1つ目は前東京大学教授(現:法務省参事官)の内田貴氏が中心となっている「民法(債権法)改正検討委員会」。3月末に予定されている改正試案の公表に向けて、現在急ピッチで作業が進められており、ホームページにも最近読み切れないくらい大量の資料がアップされたのですが、正直なところ、黒猫にも全部を読み込む時間的余裕はとてもないので、大人しく改正試案の公表を待つ方針に決めました。
2つ目は、上智大学の加藤雅信教授を中心とする「民法改正研究会」、通称「加藤民法」。民法改正研究会は、昨年10月に「日本民法改正試案・仮案」を発表したというものの、その内容は日本私法学会の会員でないと読めないということで幻滅していたのですが、私法学会での議論やその後の意見等を踏まえて若干改訂したものを「平成21年1月1日案」という形で公表し、判例タイムズ1281号に掲載されましたので、それをやっと黒猫も入手することができました。
なお、3つ目は、特に団体名は付いていないようですが、昨年『民法改正を考える』という文献を出したグループで、代表者の名前を取って「椿民法」などと呼ばれています。
これに対し、弁護士業界では、民法改正自体に批判的な意見もなお根強く、法制委員会の委員で、東海大学法科大学院の教授も務められている鈴木仁志先生が、日弁連の機関誌『自由と正義』2009年2月号に、『民法(債権法)改正の問題点』という論説を寄稿されています。
別に、民法改正自体に対する批判的意見を展開されるのはご自由ですし、鈴木先生のご主張の中には、黒猫自身も同意見という部分も少なからずあるのですが、一つだけ言わせてもらいたいことがあります。
鈴木先生は、以前から内田参与が、今回の民法改正で日本の民法をアメリカナイズしようとしているのではないかという主張を展開されていて、今回の寄稿にもそういった話に言及されているのですが、大学で英米法を習った人ならすぐ分かるとおり、そもそもアメリカには民法典自体がありませんからね。
英米法は、基本的に判例法で形成されていますから、物権と債権とか、法律行為とか、民法と商法とか、明文の民法典を作ろうとするから問題になるような概念を持ち合わせていなくても不思議ではないのですが、民法典を改正するにあたり、そもそも民法典がない国の民法を真似ようとしても、真似のしようがありませんし、検討委員会の議論を読んでも、さすがにそんな無謀なことをやろうとしている形跡はありません。
アメリカのデラウェア州法をもとに起草された新会社法は、あまりに長文・難解すぎて、法律の専門家でも細かいところまでまともに読める人が少ないため、いまや知的財産法並の専門分野になりつつあるなどとも言われていますが、その問題と今回の民法改正は、おそらく別問題と考えた方がいいでしょう。
若干話が反れましたので、ここから本題である「加藤民法」の改正試案(平成21年1月1日案)の感想に入りたいと思います。改正試案は、法律の条文の形が採られており、現行民法の第1編から第3編のほぼすべて(ただし、担保物権の部分は、実務家の意見を聴く必要があるので、まだ作成していないそうです)を網羅するものであるため、このブログでそのすべてについて言及することはできませんが、現時点で特に気になった部分について、以下にコメントすることにします。
1 (趣旨)
第1条 この法律は、個人の尊厳を尊重し、財産権の保障を基礎とした私人の自律的な法律関係の形成及び両性の本質的平等を基礎とする人間関係の形成を旨として、私人間の法律関係を規定する。
・・・これが改正案の第1条らしいのですが、なんか目的と解釈指針が混同されていて、何となくいい感じに決めようとしてかえって意味不明になっているような文言ですね。最初からこれじゃ、先が思いやられます。
2 「法の適用に関する通則法」への移管?
改正案によると、現行民法の住所に関する規定と、期間の計算方法に関する規定は「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」)に移すものとされています。
住所の規定はともかく、期間の計算は実務上もかなり重要な規定であり、民法以外の規定の解釈にも使われるものですが、なぜこのような規定を「通則法」というマイナーな法律に移す必要があるのでしょうか。
通則法は、法律の専門家なら大体の人は知っているでしょうが、もとは「法例」と呼ばれていた、その実質的内容のほとんどは国際私法で占められている法律であり、通則法を知らない人にとっては、このような移管は混乱を招くだけでしょう。
自分で「壊れていないものを壊すな」とか言っておきながら、言っていることとやっていることが矛盾しています。
3 レファレンス機能?
現行民法は、特別法により実質的に修正されている部分が多く、民法を読んだだけでは法規範の全体像が分からない一方、それらの特別法を全部民法に取り込むのも現実的ではないため、たとえば不法行為の章では「この章に基づく損害賠償については、この法律のほか、自動車損害賠償保障法、製造物責任法その他の法律を適用する」といった規定を入れて、他の法律へのレファレンス効果を持たせるものとされています。
しかし、民法の特例を定めた法律をすべて上記のような規定に入れ、かつ民法に規定のない特例は無効とするのであれば、上記のような「レファレンス効果」も意味があるかもしれませんが、不法行為の特例は当然ながら自賠責法や製造物責任法に限られるものではなく、他にもたくさんあります。
それらを全部挙げるのではなく、「その他の法律」などと書かれるのであれば、結局他の法律による特例の有無を自力で調べなければならないことに変わりはなく、レファレンス効果など実効性はないに等しいでしょう。
こんな無意味な規定を置くために無駄に条文数が増えるのであれば、迷惑極まりないです。
4 消滅時効の成立時期
改正案107条3項によると、「債権は、5年の期間満了後最初の年度末まで行使しないときは、その年度末に消滅する」ものとされています。
加藤教授の説明によると、債権の消滅時効成立時を毎年度末(条文案からは読みとれませんが、毎年3月31日を考えているそうです)に統一することにより、債権の管理をやりやすくすることが目的だそうですが、あまりにも非論理的である上に、実際の債権管理の実務において、わざと時効成立寸前まで未回収の債権を放置しておくような例はほとんどないでしょう(まともな債権者は、時効成立以前に、倒産等による回収不能にならないように気を配るのが普通です)。
実際に債権の消滅時効が成立する事例のほとんどは、既に回収を諦めて放置したか、あるいは債権の管理自体を怠っていて、気付かないうちに時効が成立していたというものであり、このような規定を置いても、まず実務上の役には立ちません。
それどころか、弁護士としては、依頼者に「なぜすべての債権について3月31日に時効が成立するのか」と聞かれたら、説明に窮するため、かえって迷惑です。
5 少額債権の消滅時効
改正案107条4項によると、元本が政令(省令)で定める額に満たない債権については、消滅時効の期間を2年とするそうですが、一体何円以下の債権を対象とするつもりなのかさっぱり分からない上に、一般的に少額債権の消滅時効を2年とされると、金額の少ない過払い金返還請求権や、マンションの管理費債権といったものまで時効が2年とされかねません。
マンションの管理費債権については、最高裁の判例で消滅時効を5年(定期金債権)としたものについても、悪質な滞納者を喜ばせるだけだということで、管理組合の関係者からかなり評判が悪かったのですが、それが2年となっては、もはや管理組合いじめの法律と言われても仕方がないでしょう。
6 所有権境界画定の申立て?
改正案137条では、所有権に関する規定の中に、「所有権画定の申立て」なる制度が新設されているのですが、それ自体制度趣旨がよく分からない規程である上に、この申立をした当事者は、?所有権確認請求又は所有権に基づく返還請求につき、中間確認の訴えをもって、その訴訟の当事者が隣り合う土地の所有者であることの確認を求めなければならない、?この申立がなされたときは、裁判所は、相手方当事者に反訴の提起を求めなければならない、などといった規定が置かれています。
中間確認の訴えや反訴の提起が強制される手続きなど聞いたことがなく、一体何を意図しているのかさっぱり分からないのですが、少なくともこの条文を作った人たちが、民事訴訟法や民事訴訟の実務を全く理解していないということだけはよく分かります。
以前、新司法試験の論文試験では実体法と手続法の融合問題を出題することが予定されていたところ、法科大学院卒業者に融合問題を解かせるのは無理だという声が考査委員の間から上がって、最近は融合問題がなくなったという話をこのブログにも書いたことがありますが、悪いのは法科大学院生ではないですね。院生たちを教える側(法科大学院の教授たち)に、融合問題など教える能力がなく、自分たちで何かの手続規定を作ろうとすると、こんな間抜けな規定しか作れないというのでは、法科大学院卒業者のレベル向上が期待できないのもある意味当然ですね。
7 基準利率
改正案では、従来一律年5%とされていた法定利率について、変動金利制を採用するものとされていますが、その利率については「基準利率は、別に政令で定めるところによる。基準利率は、これを告示しなければならない。」とされているだけで、基準利率の具体的な決め方については何も言及されていません。
現行法でも、部分的に変動金利制を採用している立法例はあり、例えば所得税・法人税・相続税にかかる利子税のうち一定のものについては、利率が日本銀行法15条の規定により定められる商業手形の割引率(現在は「基準割引率及び基準貸付利率」として定められ、2008年12月19日よりその割合は0.30%)に4%を加算したものとされています(租税特別措置法93条。ただし、年率7.3%が上限)が、民法上の基準利率の定め方について法律に全く規定を置かず、政令に丸投げというのは、立法案のあり方としてあまりに無責任でしょう。
民法上の法定利率が何%になるのか「あの」麻生総理次第などというのでは、怖くてとても賛成できません。
改正法のポイントとされているところを中心に、改正試案をさらっと流し読みしただけでも、これほどまでにバカ規定のオンパレードというのでは、詳細まで検討していったら、おそらく他のところも穴だらけでしょう。
加藤民法の研究会では、日弁連や東弁を含む法曹関係者との懇談会を呼びかけているようですが、この改正試案の内容を読む限り、こんなバカな連中と懇談するだけ時間の無駄だと思います。民法学者約20人が3年もかけて、このざまではねえ・・・。
というより、新司法試験を受験するにあたり、こんな馬鹿な連中が講義をやっている法科大学院の修了を強制されるというのは、憲法22条で保障されている職業選択の自由を不当に制限するものであり、憲法違反とするしかないでしょう。
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